鮭の子漫画

惰性の漫画と日記を書くの

北海道が流れているの

 まだ誰も気がついていないだろうが、北海道は流れている。本州に近づいているのなら、青函トンネルを使う数少ない民は歓喜するだろう。しかし逆。ロシアに向かって流れている。津軽海峡は広まり、中国船が太平洋に出やすくなった。政治的でセンシティブでボケにくい状況だ。

 この事実を世界で初めて発見したのは、渡辺さんだ。発見の経緯は以下である。

 ある日彼女は、東京から札幌への航空券を予約した。理由は梅雨を回避するため。優雅だ。格安航空の、さらに格安プランで、隣の乗客と恋を語れるほどにギュウギュウと輸送されるのだとしても、優雅だ。

 東京の弱点は地価と梅雨。地価は札束で捻り伏せることができる。所詮は紙だが、威力は絶大。一方、神に一撃くらわせるくらい無謀なのが梅雨への勝利。神器でも錬成できれば話は別だが、人類の進化曲線は今現在、滞っている。

 そんな最強の「梅雨」。勝てないのなら逃げてしまえと気軽に移動できるのは、何度も言うが、優雅以外のなにものでもない。IT業だからか在宅勤務だからか社長だからか、とにかく渡辺さんは仕事を辞めずに梅雨を回避した。

 渡辺さんは元々、よく札幌に旅行していた。だから刻み込まれていた90分というフライト時間。たったの1時間半で冷えた大地に移動できるという感銘を、彼女は忘れるわけがないのだ。

 さあ本題。今回、予定されていたフライト時間は110分。二割強も時間が延長されていたそうだ。おかしい。たったの90分で鮭イクラ、味噌ラーメンにスープカレーと、腎臓や胃をいじめにかかれていたのに、映画一本分の時間となれば少し話が違う。

 訝しんだ渡辺さんは立ち上がった。機内でWi-Fiを掴む。そうして調べた結果、110分に延びたフライト時間は、今回に限ったことではなく全てのフライトに適用されていた。

 そう、北海道は東京から遠ざかっていたのだ!

 渡辺さんは繋がったWi-Fiを無駄にせず、延びたフライト時間も無駄にせず、北海道が流れている理由を調べた。そうして判明したのが、

北海道民島流しの刑」

 という事実。

 ある年から北海道は、本州からの食料品輸入に関税をかけるようになった。道内での食料自給率200%という利点を活かしての策略だ。

 細々とした農業で稼いでいる新潟、群馬、栃木、茨城は大激怒。泣きついた先は東京都。食料自給率1%を切る都は、一次産業二次産業では勝てないことを受け入れ、代わりにIT関税を設けた。23区に所在する企業が運営するサービスへの課金に、北海道からのアクセスのみ関税を敷いた。いつもは足の遅い行政であるが、特別区という枠組みが迅速な対応を可能にしたという初めての例だ。

 それに北海道も黙っちゃいない。札幌という大きな経済圏守りつつ、人材の流出を防ぐという名目で、23区へのインターネットアクセス自体を禁止した。冬に白銀の世界となる北海道、その盾となるこの施策は「銀盾」と呼ばれた。銀盾を設けた真の理由は、もちろん東京都への仕返しだ。

 そんじゃあ道民は、パズドラもできないし、LINEも使えないじゃないかと思うがご安心あれ。札幌の企業が、代替サービスを作った。メッセージアプリは「do-chat」、パズドラは「パズル&ベアーズ」だ。

 こうした仕返しの応酬は水面化で延々と繰り返された。決着を急いだ都は、大胆な策に出る。

 それが、島流し。北海道を、1年あたり100kmも北上させている。

 今はまだフライト時間2割り増し程度の島流しで済んでいるが、ロシアとの物理的距離が狭まることで、道民も焦りを隠せないようだ。

 焦りだけではない。怒り、憤り、憂い。様々な感情をクツクツと煮詰めて混沌とした状況。

 そんな最中の札幌で、渡辺さんは優雅に過ごした。

 湿度が少なく風が爽やかな6月の札幌。朝目覚めるとつい、スムージーを作ってしまうほどの余裕が出る。

 パタタタンとキーボードを打って最低限の業務をこなす。昼食は、手軽で美味しい回転寿司。札幌は、いたるところに高品質で低価格な回転寿司があって助かる。イクラが好きな渡辺さん。数百もの鮭の子を咀嚼する。

 政治的ないざこざがあっても、美味いもんは美味いらしい。

 

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おわりっ