鮭の子漫画

惰性の漫画と日記を書くの

世の中の中心は、仙台市だってさ

ご時世的なこともあり、フェイクニュースがよく飛び交っている。フェイクニュースを見かけるたびに、神山くんのことを思い出さずにはいられない。

高校まで、僕らは仙台市に住んでいた。東北一の都市として、仙台市民は誇りをゴミ屋敷のようにうず高く積み上げていたし、仙台市周辺の市民も仙台市民ぶっていたし、なんなら宮城県民全体が、仙台県民であるかのように振る舞っていた。よそからしてみれば、宮崎との区別すらつかないわけなのだが、他県と関わり合いがない仙台市民である我々は、本気で世界の中心にいると勘違いしていた。

冒頭の神山くんも、もちろんその錯覚をしていた一人だ。というか、イカれていた。

仙台市の外側は、ない」

神山くんは、唐突に言った。高校一年生の終わり頃、文系か理系かの選択を迫られている季節だった。

「来年の修学旅行でいくディズニーランドは?」

誰かが言った。

神山くんはまず、「いい質問だね!」とにんまりとした。

彼によると東京ディズニーランドは、典型的な仕様バグないし偽りの証であるらしい。東京と名がつくのに千葉に存在しているそれは、どう考えたって世界の矛盾を孕んでいるそうだ。

「じゃあ、仙台市の端に行ったら、何があるの?」

学年で断トツに可愛い女子が言った。神山くんへ嫉妬する気が起きないほどに、男性陣は既に話に入り込んでいた。

少しふっくらして艶のある頬をした神山くんは怖い顔を作って「絶望があるんだ」と言った。

なんでも、嘘偽りを語っていなければ正気を保てないのが「外」であり、人が生きるのには適していない環境らしい。

僕はそれを聞いて、ハッとした。仙台市を捨て上京した兄は、一向に帰省する気配がないどころか、連絡すらつかなくなった。

小綺麗なアナウンサーが東京の洒落た店を紹介している映像がテレビから流れるのは、僕らに"絶望"を見せないための青少年保護育成条例か何かによる施策に違いない。

 

そうして僕は、理系を選択し、男子ばかりで進級もまともにできない難関大学に合格し、ブラックな研究室で四苦八苦している。場所はもちろん東京だ。

 

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おわりっ