鮭の子漫画

惰性の漫画と日記を書くの

心のプーさんを自制できなくなった黒岡さん

 オジサン連中はよく、「湯豆腐が嫌いだって? さては本物の湯豆腐を食べたことがないんだな」と卑怯で低俗な言い回しを若者によくする。

 だが、ハチミツに関してだけは、あながち間違っていない。むしろ、本物かそうじゃないかで、多大な影響がある。

 安価で手に入るものではなく、純粋な本物のハチミツを舐めたとき我々は、プーさんという種類の自我を抑えきれなくなる。私たちは幼少期から、万国共通、黄色いクマが脳裏に刷り込まれているからだ。

 大抵の日本人であれば、本物のハチミツを食べる機会は少ない。摂取できたとしても蜂蜜レモンサワーとかいうエセのハチミツだし、世の中は粗悪品で溢れている。

 そんな中、職業体験で本物のハチミツをぺろりとした黒岡さんは、バチクリ脳を痺れさせた。

 以後黒岡さんは、ディズニーランドのハニーハントに立ち入り、蜂蜜の匂い噴射器の前で籠城するという奇行を犯すまでになった。

 見かねた担任が「カナダには本物のハチミツが多くあるよ、だから英語がんばろ」と黒岡さんを絆すのだが、たったそれだけで黒岡さんは見違えるように勉学に励むようになった。百花繚乱、色彩顕美、まさに人生が豊かに色づいた瞬間で、周囲は驚き、小躍りをする者も現れ始めた。だって勉強をしてこなかった人間は、そう簡単には勉強熱心になれないのが一般的だ。多少のご褒美や交換条件を持ち出されてやる気に火をつけられたとて、勉強は積み重ね。勉強のやり方が身についていない者は、その過酷さを前にして、くすぶり、消沈する。

 しかし黒岡さんは、カナダには本物のハチミツがあるという情報だけで邁進し始めたのだ。こんな簡単に変われるのなら、そもそも元から勉強に励めていただろうに、この原動力はなんなのだ。核もウランもびっくりだ。

 おそらくこの時点で、彼女は心のプーさんを制御仕切れなくなっている。いや、制御できないのであれば、いい方向に扱ってやれといわんばかりに、乗りこなし始めていると言える。まさに、象使い。巨神兵を我が物にした博士さながらだ。

 そうこうしているうちに、なんやかんやでいい大学に進学した黒岡さん。ワーホリを利用して、カナダに出港していった。

 帰国後の彼女は、日本にいるだけでつらそうだった。本物のハチミツが、出回っていないからだ。「ハチミツが切れても、カナダでは大麻で気を紛らわせらた。けれど日本じゃ、それも無理。元も子もないよ」と黒岡さんは四方八方に呆れていた。ハチミツの欲望――心のプーさんを抑制するために大麻に手を出すなんてそれこそ元も子もないと僕は思ったのだが、カナダで大麻が解禁されている理由が分かった気がして、妙にしっくりきた。

 アメリカの一部で大麻が解禁されたのは、どうやらポパイを心に飼ってる人が多い文化だかららしく、それも仕方がないのかもしれない。

 

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おわりっ